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アフタヌーンティーサロン「Art on Tea Table」を主宰し、洋菓子・食卓芸術家として活動する藤川温子さん。 ロンドンのコルドンブルーで学び、5つ星ホテルでの経験も持つ“本場のプロ”である彼女が今回選んだのは、SNSでも商業出版でもなく、Bookoでの自費出版でした。
膨大な知識を持ちながら、なぜあえて自費出版という形を選んだのか。 そして、初めての執筆を挫折せずに完走できた理由とは。 その舞台裏を伺いました。
今回刊行された『ロイヤルスコーンパーティーへようこそ』は、単なるレシピ本ではありません。スコーンの名前の由来となった「スクーンの石」の歴史や、イギリス王室の戴冠式との関わりなど、深く専門的な文化背景を紐解く一冊です。
藤川さんは、出版を決意した背景をこう語ります。
「レッスンのたびに膨大な資料が出来上がりますが、限られた時間の中ですべてを楽しくお伝えすることに限界を感じていました。また、SNSでの発信を始めると似たような投稿も増えてきたため、自分の視点をきちんと体系立てた文章にして、信頼性の高い形で残したいと思うようになったんです」
商業出版の枠組みでは「マニアックすぎる」と削られてしまいかねない、スコットランドの歴史や宗教・文学への言及。しかし、それこそが藤川さんの伝えたい“文化の核”でした。その自由な表現を求めて、自費出版を選択されたわけです。
藤川さんは当初、出版について右も左もわからない状態でした。そんな彼女が完走できた理由は、Bookoの「出版ゼミ」という環境にありました。
「2週間に一度、出版のレクチャーを受けたり、メンバーの進捗を共有したりする時間がありました。プロ編集者のカベウチの様子を聞いているだけでも、大変勉強になり、励みになりました。最初はひたすらメモを取る日々でしたが、自分の番になると、帯の言葉選びからアプリの使い方まで、徹底的に鍛えていただきました」
自費出版は、一人で進めるとどうしても孤独になり、途中で止まってしまいがちです。
「Bookoで一番良かったのは、システムそのものよりも、ゼミを通じて仲間と交流しながら進められたことです。先輩方の経験を聴き、お互いに刺激し合える環境がなければ、完成までたどり着けなかったと思います」
出版後、藤川さんのもとにはSNSでは得られなかった反響が届くようになります。
「70代から90代の方々から、嬉しいコメントをたくさんいただきました。『SNSよりも書籍の方が読みやすい』『何度も読み返して写真を眺めている』というお声をいただき、本を出版して本当に良かったと実感しました。YouTubeやInstagramでは伝えきれなかった深い内容も、本であれば正確に、より高い信頼性を持って届けることができます」
また、出版を機に活動への信頼が高まり、男女問わず新しい層の生徒様がレッスンに訪れるようになるなど、ビジネス面での変化も実感されているそうです。
最後に、出版を通じて得られた“意外な副産物”について伺いました。
「本を作るには、テーマを絞り、読者に何を伝えたいのかを徹底的に考え抜く必要があります。帯のタイトルを考える過程で、『自分にしかできないことは何か?』『自分の活動のテーマは何だろう?』と、改めて自分の軸を見つめ直すことができました。執筆は、ただ知識を出す作業ではなく、自分自身の活動の目的を再確認する大切な時間になるはずです」