
半導体エンジニアであり、これまで商業出版で多くの数学本を手がけてきた蔵本貴文さん。
そんな“数学のプロ”が今回選んだのは、あえての 自費出版。しかも、Web上のテンプレートで本を作れる Booko という新しい出版サービスでした。
なぜ、商業出版ではなく自費出版を?
なぜ、多くの選択肢の中でBookoだったのか?
その答えを伺いました。
今回刊行された『数学で右脳が目覚める なぞりがき三角関数』は、三角関数の“波”をなぞり書きしながら感覚で理解するという、極めて独自性の高い数学書です。
蔵本さんは、この企画を「商業出版では成立しにくい、マニアックすぎる内容」と語ります。
そのため、今回は初めてイラストにも挑戦し、AI生成の素材を組み合わせながら表現方法を模索したそうです。
「私は、文章や図を書く本はこれまで何冊か出版していますが、今回はイラストにも挑戦しました。AIを使って作成したのですが、予想以上に良いものができました。その過程もゼミで報告しながら進めていきました。おかげさまで、自分の表現の幅が広がったと思います。このように、書籍作りを続けることにより自分の知識や経験が広がっていくのが楽しみです」
数学を「なぞり書き」という体験型で学ぶ本は、おそらく世界的にも珍しいもの。
だからこそ、出版社の企画基準にはまらない。
その自由度を求めて、自費出版を選択されたわけです。
自費出版にはKDP(Kindle出版)をはじめ、さまざまな選択肢があります。
それでも蔵本さんは、Bookoを選びました。
その理由は少し意外でした。
「Bookoで一番良いところは、その Webシステムよりも、オンラインゼミを通じて仲間と交流しながら進められることです」
蔵本さんは、商業出版だけでなく、自身でKindle出版の経験も持ち、出版経験はとても豊富。そんな蔵本さんでも自費出版は“ひとりでは挫折しやすい”と感じていたそうです。
「他のメンバーの努力を見ていると、自分もやらねば、という勇気をもらえます。本を作るだけであれば、一人でAmazonのKDPを使って出版する方法があるのですが、この方法だと途中で力尽きて、本書は完成までたどりつけなかったと考えています」
オンラインゼミの存在が、モチベーション維持の重要な要素だったことがわかります。
さらに、自費出版ならではの葛藤についても率直に語っています。
「理想は高いものの実際に作ってみると、複雑だったり、わかりにくかったりします。そこのギャップは最後まで埋められず、時間もダラダラと過ぎていきました。ただ、まずは世に出さないとフィードバックが得られないためどこかで妥協する必要があります」
Bookoの“伴走型”の環境が、蔵本さんを完走まで導いたと言えます。
実はこの本は 技術書典(エンジニア向け同人誌イベント) で先行販売されました。
Bookoでは文学フリマにも出店していますが、エンジニア系の著者だったのでゼミメンバーとともに技術書典にも初参戦。
「技術書展への出展というイベントに参加する機会をいただいて、不完全ではありますが形ができて良かったです。完成した本を手に取った時は本当に感動でした。読者からの生のフィードバックが得られたことが良かったです。自分が意図していた通りの反応をいただけるのも嬉しいですし、それとは違う反応も興味深いです」
また、Kindleではできない紙の本ならではの企画についても伺いました。
なぞり書きは、紙の上でペンを動かすからこそ成立する“体験型の学び”。
Bookoのオンデマンド出版は、紙の本が1冊からAmazonや楽天ブックスで販売できる仕組み。こうした紙の本の企画と非常に相性が良いのです。
情報を届けるだけではなく、手で動かして理解する“体験”としての数学本を作れたことに、蔵本さんは大きな手応えを感じたと言います。
最後に、本を作りたい人へ向けたメッセージを伺いました。
「本を通じて、自分の経験や知識を形にすることはやった人でしかわからない感動と成長があります。気になっている人は、ぜひ一度体験してみて下さい」